大判例

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高松高等裁判所 平成2年(ラ)67号・平2年(ラ)71号・平2年(ラ)69号・平2年(ラ)68号・平2年(ラ)61号・平2年(ラ)62号・平2年(ラ)59号・平2年(ラ)60号・平2年(ラ)65号・平2年(ラ)64号・平2年(ラ)70号・平2年(ラ)63号・平2年(ラ)66号 決定

主文

一  原決定中、相手方遠藤文一、同田岡源市、同西岡豊、同大西昭三郎、同井浦久男、同藤本健一に関する部分を取り消す。

右相手方ら六名の本件訴訟救助付与の申立をいずれも却下する。

二  抗告人住友金属鉱山株式会社、同鹿島建設株式会社、同西松建設株式会社、同鉄建建設株式会社、同株式会社熊谷組、同飛島建設株式会社、同株式会社間組のその余の抗告及び抗告人大成建設株式会社、同フジタ工業株式会社、同住友建設株式会社の抗告をいずれも棄却する。

理由

一抗告人らの抗告趣旨及び抗告理由は、別紙各抗告状中の抗告の趣旨及び理由のとおりであり、これに対する相手方らの反論は別紙意見書記載のとおりである。

二本件抗告の適否について

訴訟上の救助の裁判に関する民事訴訟法一二四条には即時抗告の対象について限定する規定はないし、また、訴訟上の救助付与に対する不服申立と類似の機能を有する訴訟上の救助付与の取消申立については同法一二二条で利害関係人に申立権が認められているところ、本案訴訟における相手方は当然これに含まれるものと解される。更に、訴訟上の救助を与える決定がなされた場合に、その裁判が失当であるときは、本案訴訟の相手方は民事訴訟法一〇七条、一二〇条の担保免除による不利益を受けるし、訴提起の手数料の不納付による訴状却下の裁判を得られない不利益ひいては濫訴による不利益を受けるおそれがあるなど実質的な利害関係を有するというべきであるから、訴訟救助付与の裁判に対してはその相手方は民事訴訟法一二四条により即時抗告ができると解するのが相当である。

三原決定の当否について

1  本件記録によると、相手方らは現にじん肺に罹患している者、もしくはじん肺によって死亡した者の相続人として、抗告人らに対して、債務不履行又は不法行為を理由に損害賠償請求訴訟を原裁判所に提起している者であるところ、同訴訟につき相手方らに勝訴の見込がないとはいえないことが一応認められる。

2  記録によると、次の事実が認められる。

(一)  平成元年分・税務統計から見た民間給与の実態調査によると、同年度の給与所得者のうち一年を通じて勤務した者の平均給与は男子四九三万円、女子二三六万円、男女計四〇二万円であるが、これを企業規模別に見ると、個人企業においては男子給与は三二九万円、女子給与は一九三万円であり、又、給与所得者の給与階級別分布を見ると、年間給与額が三〇〇万円以下の者は男子では計22.7パーセント、女子では計77.5パーセント、男女計では計四二パーセントとなっている。また、業種別にみると、相手方らの従事していた鉱業関係での平均給与は二八九万円で、また、相手方らの居住する徳島県の所得指標によると一世帯当たり平均所得は二四八万九〇〇〇円である。

(二)  労災保険として、相手方井浦久男(以下「井浦」という。)が三四八万円(他に年金三七万〇六〇〇円)、同遠藤文一(以下「遠藤」という。)が三〇九万円、同大西昭三郎(以下「大西」という。)が三八九万円(他に収入三万二〇〇〇円)、同田岡源市(以下「田岡」という。)が四二九万円(他に年金一四万四三〇〇円)、同中田一三(以下「中田」という。)が一四八万円(他に年金四五万二四〇〇円)、同西岡豊(以下「西岡」という。)が四八六万円(他に農業所得二万円)、同橋本福美(以下「橋本」という。)が〇円(但し、給与所得は一三二万四六〇〇円)、同藤本健一(以下「藤本」という。)が三七二万円の各給付を受けているが、相手方岩城ミヤ子(以下「岩城」という。)、同中村彦一(以下「中村」という。)、同大上栄(以下「大上」という。)はその保険給付もその余の収入もない。右給付を受けている者はこれを含む収入で生活費を賄っている。

(三)  本件本案訴訟は訴額も大きく、その立証活動には科学的専門的諸資料が必要とされ、訴訟追行上少なからぬ費用を要することが予想される。しかし、本件はいわゆる徳島じん肺訴訟の第二次訴訟であり、事実上第一次訴訟で収集、利用された資料の相当部分を重ねて利用でき、これに要する費用は第一次訴訟に比較すればそれより低額で済むものとみられる。又、相手方らの年齢はおおむね五五歳ないし六五歳で、子らも成人に達し同居する場合にもその扶養を考える必要はなく、むしろ、扶養を期待しうる立場にあると考えられる者も多い。

以上のとおり認められる。

労災保険給付は、労働者災害補償法により労働者の社会復帰の促進、援護、適正な労働条件の確保等を図り労働者の福祉の増進を図るために給付されるものであるが、労働者がこれにより社会生活を営む点では広義の収入に当たり、民事訴訟法一一八条にいう「資力」に当たると解するのが相当である。従って、本件において、抗告人らの労災保険給付額は右資力としてこれを考慮する。年金も同様に受給者の生活費となる点からみて同条の「資力」に当たる。

右認定及び説示の点を総合考慮すると、労災保険給付を含む年収が三〇〇万円以下の者は、原則として、同条の訴訟費用を支払う資力がない者に当たり、右額を超える者は、同条の資力がない者に当たらないと解するのが相当である。

右の基準からみると、相手方岩城、同中村、同大上、同橋本、同中田については、いずれもその年収が三〇〇万円以下で、他に資力を有するとみるべき証拠がないから、同条の訴訟費用を支払う資力がない者に当たる。しかし、相手方遠藤、同田岡、同西岡、同大西、同井浦、同藤本については労災保険給付を加えいずれも年収三〇〇万円以上の収入があり他に特段の事情も見当たらないから、同人らは同条の訴訟費用を支払う資力がない者には当たらない。

三よって、原決定中、相手方遠藤、同田岡、同西岡、同大西、同井浦、同藤本に対して訴訟上の救助を付与した部分は失当であるから、これを取り消し、右相手方らの本件申立をいずれも却下し、右相手方六名を除く相手方岩城、同中村、同大上、同橋本、同中田に対する本件抗告はいずれも理由がないから棄却し、主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官高木積夫 裁判官孕石孟則 裁判官高橋文仲)

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